ベンゲット州キブンガン町

CGN初めてのコーヒー栽培事業

 

2003年、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)はキブンガン町で森林再生事業を実施しました(フィリピン熱帯林保全基金PTFCF/イオン環境財団 助成事業)。この事業では森林再生のためにベンゲット松、イピルイピル、アルノス、カリエンドラの苗木を、おもに裸地・荒地に植樹しました。また環境保全と農家の収入向上のためにアグロフォレストリー栽培の手法を用いて、アルノスとコーヒーの苗木を植樹しました。また、コーヒー栽培、苗木場の設置、防火線(山火事の広がりを防ぐ)、水源林の保全、気候変動と森林保全の重要性などのテーマで村民対象の講習会を開催しました。

 

サグパット村の主な収入源はサヨテ(ハヤトウリ)の栽培です。サヨテは”グリーン・ゴールド(緑色の金)”と言われるほど、山岳地方では換金作物として人気があり、広く栽培されている作物です。しかし買取価格の変動が激しいため農家の収入は不安定であり、また、サヨテの単一栽培による病害の大発生などが問題となっています。そして、サヨテ畑は、山の斜面を切り拓いて作られるため、森林破壊、土壌流出などの環境問題を引き起こしています。

 

サグパット村では、アグロフォレストリー栽培の手法の一つとして、サヨテの下でのコーヒーを育てています。サヨテ栽培を続けながら、コーヒーの木が土壌を守り、またコーヒーが新たな収入源にもなります。またサヨテはコーヒー栽培に必要な日陰をもたらし、コーヒーの成長を助けるので、まさに一石二鳥です。

事業終了後の取り組み

 

キブンガン町での森林再生事業は2007年3月に終了しましたが、事業終了後も村人たちはコーヒー栽培に熱心に取り組み、その成果として2009年にキブンガン町のコーヒー豆を日本へ輸出することができました。これがCGN最初のフェアトレード・コーヒーでした。コーヒー栽培とともに、村人たちは苗木場で苗木を育て、村内でコーヒーやその他の木の植樹を続けるとともに、苗木の販売が新たな収入源ともなっています。

 

2008年には、キブンガン町サグパッドの村人たちはSagpat Young Farmers' Organization Inc. (サグパット・ヤング・ファーマーズ団体)を設立。若い農民を中心に、コーヒーの有機栽培だけでなく、その他の作物も有機栽培へと転換する活動を続けています。

 

また、2013年2月には文京学院大学環境教育研究センターのスタディーツアーグループがキブンガン町のサグパット村を訪問し、農家でのホームステイを通して、コーヒー栽培や山岳地方の暮らしについて学び、村人との交流を経験しました。(ツアー参加者の感想文はこちら

 

サグパッド村でのコーヒー生産量は順調に伸びていますが、同時に害虫や病気などの問題も出てきています。CGNでは、日本人コーヒー専門家・山本博文氏を講師に招き、品質向上のための収穫後の加工技術のトレーニングとともに病害虫対策の指導もしています。

アルヌスの木の下で栽培されているコーヒーの苗木
アルヌスの木の下で栽培されているコーヒーの苗木

生産量が増加し始めたことを受け、フェアトレード認証の取得を目標に掲げ、2017年度には京都のNPO法人フェアプラスとフェアトレードショップ「シサム工房」による持続可能なコーヒー生産のための講習会シリーズが開催されました。(講習会のレポートはこちらのフェアプラスのブログで)。

2019年度はさらに栽培量を増やしたいという生産者の要望を受け、CGNが主体となりイオン環境財団の助成を受け植林事業を行いました。アラビカ・コーヒー5,695本、トゥアイ2370本、アルヌス1,400本の計9,465本が、サグパット農業組合(Sagpat Farmer Agriculture Cooperative = SFAC)のメンバーによって植樹されました。このプロジェクトの一環として、2019年11月には、持続可能なコーヒー栽培であることの指標として野鳥観察をするためのワークショップも開催されました。