CGNのコーヒー栽培プロジェクト

バギオ市の環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」は、コーディリエラ地方のたくさんのコミュニティで、先住民族の生計向上と緑化を目的としたコーヒーのアグロフォレストリー(森林農法)による栽培事業を行ってきました。 

 

●アグロフォレストリー栽培とは?

ボランティアもコーヒーの植樹に参加
ボランティアもコーヒーの植樹に参加

 アグロフォレストリー栽培とは、農業(アグリカルチャー)と林業(フォレストリー)を組み合わせた栽培方法。一つの土地に単一の作物ではなく、多種類の樹木や作物を組み合わせて育てる栽培方法です。コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2003年のベンゲット州キブンガン町ポブラシオンでコーヒーの苗木を配布したのを皮切りに、ベンゲット州キブンガン町パリナとサグパット、カバヤン町、トゥブライ町、イフガオ州ハパオ村、バランバン村、マウンテン州バーリグ町カダクラン地区などで、アグロフォレストリーによるコーヒー栽培を行ってきました。

カリエンドラの苗木
カリエンドラの苗木

植樹地では、もともと生えているベンゲット松などの樹木をそのままに、成長の早いアルノス、マメ科で土地を肥やす役割を果たすカリエンドラなどの樹木を植え、その合間にコーヒーの苗木を植えます。コーヒーの木が育ち、日陰を作るようになると、その根元にしょうが、ウコン、サトイモ、ウベ(紫いも)などを植え、限られた土地から複合的に収入が得られるような農場作りを行っています。

また、傾斜地のサヨテ(チャヨテ=はやとうり)栽培の棚の下にコーヒーの苗木を植えることも推奨しています。

山火事で焼けた森
山火事で焼けた森

山岳地方での森林破壊の主な原因は、森林を畑に転換するための火入れによる山火事です。貧しい先住民族は、現金収入を得るためにやむを得ず、森林に火を放ってきたのです。アグロフォレストリー栽培では、森林を生かしながら同時に収入を得ることができます。環境保全と収入向上。この二つの目的を同時に達成できるのです。

●香り高いアラビカ・コーヒーを栽培

 

コーヒーには大きくアラビカ種とロブスタ種、リベリカ種の三つの種類がありますが、コーディリエラ地方で栽培されているのは、アラビカ種とロブスタ種です。

アラビカ種は一般的に標高700m以上の高原地方での栽培に適し、味と香りが優れています。しかし、環境の変化や病害虫、霜害の影響を受けやすいという特徴があります。一方、ロブスタ種は丈夫で、比較的低地の高温多湿の地域でも栽培できますが、独特の臭いや苦味が強く、またカフェインの含有量もアラビカと比べて多いのが特徴です。

 

CGNのコーヒー栽培事業ではアラビカ・コーヒーの植樹を行っています。コーディリエラ地方は標高700m以上の険しい山岳地方で、雨季と乾季がはっきりと分かれているなど、気候的・地理的に美味しいアラビカ・コーヒーの栽培条件を満たしています。

 

アラビカ種の中にもさらに細かく品種があるのですが、コーディリエラ地方では、おもにティピカ種、ブルボン種、カトゥーラ種、サン・ラモン種、モンドノーボ種などが多く栽培されています。 

●CGNがコーヒー栽培事業をすすめる理由

 

CGNがコーヒーのアグフォレストリー栽培を勧めているのには、次のような理由があります。

 

1.多くの先住民族が伝統的にコーヒーを飲む習慣があるため、自家消費用のコーヒー栽培の経験がすでにあり、村の誰にでも簡単に栽培できる。また、余剰物や輸出に適さない低品質のコーヒーも、自家消費または地元の市場で販売できる。

 2.先住民族の特産物として知られる赤米などと異なり、コーヒーは主食ではなく嗜好品であるため、コーヒーを販売しても食糧不足にはつながらない。

 3.乾燥させた生豆の状態で保存できるため、コーヒー農家は市場価格の低いシーズンは売り控え、価格が上がってから販売することができる。また、台風や土砂崩などで市場までの道路が遮断されても、鮮度が命の野菜とは違って経済的な損失が少ない。

 4.すでに村にあるコーヒーの木から種を採取し、苗木を栽培することができる。資本がなくても誰でも栽培を拡大できる。

 5.コーヒーは赤道付近でしか栽培できないため、日本や欧米などの先進国に輸出し、安定した外貨を得ることができる。また近年、韓国や中国などのコーヒー需要も増えている。

 6.フィリピンはアラビカ・コーヒーを輸入しており、国内需要も高い。

 7.フィリピンから日本への距離が他のコーヒー生産国と比べて近く、輸出する際のフードマイレージ(食糧輸送量×輸送距離。輸送のために排出される二酸化炭素量が把握できる)を考えると有利である。 

●コーディリエラ地方のコーヒー生産の課題

 

コーヒーの木が初めて実をつけるのは、苗木を植えてから3、4年目。CGNの指導で過去に植えてきた苗木の中には成長し、すでに収穫が始まっている木もたくさんあります。栽培農家の方たちが今直面している問題は、収穫したコーヒーの果実の加工です。コーヒーの生豆を海外に輸出するには、生豆という状態にしなくてはなりません。そのためには収穫後の加工の知識や機材が必要です。また、品質を理解できる人材も不可欠です。CGNでは、栽培指導と同時に、収穫後の加工や乾燥などの方法に関する指導も行っています。

 

また、生産したコーヒーの販売が栽培農家の人たちの暮らしの向上にきちんとつながることが大切です。CGNでは「フェアトレード」についての啓発活動も始めました。品質に見合った適正な価格で取引されるように、マーケット開拓のサポートもしています。

 

CGN が先住民族の栽培農家の人たちとともに、試行錯誤で種から育ててきたコーヒー豆です。栽培、収穫、加工、流通、販売、それぞれの過程でまだ改良の余地はたくさんありますが、栽培農家の人たちと協力して、努力を続けています。