山本博文の北ルソン・コーヒー探訪記⑰

ワークショップの旅は続く……

 

 今回は、CGNのコーヒー事業を支援してくださっているWE21の皆様との出会いから始まります。

ジプニーに乗ると、美しい女性陣が明るい笑顔で出迎えてくれました。遠路はるばる、日本から、しかも、マニラからの6時間のバスに揺られて、疲れていらっしゃると思いきや、溌剌とした声で挨拶をしてくださいました。今日は、トゥブライのコロスという場所で、精選方法のワークショップです。

 現地到着後、すぐに、受益者の皆さんの農園へ訪問しました。WE21の方もアップダウンが激しい山道をサクサクと進んでいきます。素晴らしく整備された、これぞアグロフォレストリー(シェードグロウンコーヒー)といった農園をみて、十分に手応えを感じていらっしゃいました。

 

 

 お昼ご飯を食べて、早速ワークショップの開始です。ここは、以前ワークショップを行ったところで、今回は、もう少し、突っ込んだテクニカルな話をしました。通常の水洗式だけではなく、非水洗式のコーヒー、そしてハニーメソッド。水洗式は、果肉除去から発酵という段階を取りますが、非水洗式は果肉を除去しません。収穫した実をフローター選別後、そのまま天日乾燥させます。また、ハニーメソッドは、果肉を除去した後に、発酵段階をとらず、そのまま天日乾燥させます。それぞれに特徴があるので、一つのコーヒーからいろいろな香味を作り出すことが可能です。そうすれば、香味のバリエーションが作れるようになり、買い手側にも選択できるようになります。発展は、選択肢の多さ、とぼくは信じていますので、ぜひここの農家さんたちにもやってもらおうと思っています。

 セミナーでは、トゥブライの町長さんもいらっしゃって、興味深く聴講してくださいました。収穫量はまだまだ、少ない地域ですが、今後がすごく楽しみな地域でもあります。

 

 

 今年のニュークロップを試飲しましたところ、スパイシーな香りとハーブのような華やかさと、青々しい酸味が特徴で、甘味をしっかりと感じるものに仕上がっていました。まだ、不安定な品質なので、来年きっと安定した、そして十分な量を収穫できるようになると思います。がんばれ。

 

 

 このセミナーからまもなくして、今後は、前回のブログで掲載したカルサダ・コーヒーから依頼された農家さん向けの、精選方法のワークショップです。彼らのプロジェクト地域は、マウンテン州にあります。ここは、サガダがある地域で、標高が比較的高い場所です。

 車とジプニーを乗り継いで、6時間ほどで到着です。到着してそうそうに、ワークショップを始めました。プロジェクターもないので、口頭と資料でゆっくりと説明し、そして、事前に収穫してもらっていた実を用いて、手順通りにやってもらいました。皆飲み込みが早く、そして、協力し合いながら、スムーズに進めることができました。

 

 

 セミナー終了後、質問があるかを聞くと、次々と手が上がりました。皆、コーヒー栽培に強い熱意をもっています。病虫害対策、この病気にはどういった方法をとればいいのか、老齢の木に対してはどういった方法でメンテナンスすれば良いのか等々、意欲を感じます。最後は、カルサダ・コーヒーの生産地担当のスタッフ(以前マニラでトレーニングをした人)と一緒に写真を。

 後日、出来上がった豆を試飲しました。素晴らしいコーヒーでした。酸味、ボディ、甘味共に申し分なく、香りもぶどうのピールのような香りで爽やかでした。その豆をアメリカでカッピングしてもらったら、一番高評価だったようです。よかったね、カルサダ・コーヒー。

 

 まだまだ、ワークショップは続きます。

つぎは、農業省の依頼から始まったものです。場所はカバヤンという場所で、だいたいバギオから3時間で到着します。時間は短いのですが(この時間でも短く感じてしまいます。人間の順応性すごい)、道がいつもよりも曲がりくねった道を行きます。酔うこと必至。

 会場に到着すると、約50人ぐらいの参加者が待っていました。おお、ちょっと多いな。とか思いながら、しっかり頑張るぞと気合を入れて臨みます。ちょうどこの時、マニラから、カフェのオーナーが来ていました。コーヒーエンパイアー。こちらのコーヒーショップも以前のブログで伝えた、コーヒー生豆用の素晴らしい貯蔵庫と広めに取った焙煎室を設置しているオシャレなカフェで、最後にキティちゃんのラッピングカーで送迎されたところです。

 

 

 これはいい機会だと思い、しっかりとワークショップを終わらせた後、彼らにコーヒーを抽出してもらいました。皆、マニラのカフェはどんなコーヒーを作るのか興味津々で、一挙手一投足を見守っていました。出来上がったコーヒーを一口飲んで、「すっぱい(>.<)」といった顔をしていました。浅めに焙煎したコーヒーでした。通常農家さんたちが飲んでいるコーヒーは、黒光りするぐらいまで焙煎した、苦い苦いコーヒーです。それを煮出して、砂糖をガバガバいれるのが、彼らの流儀です。確かにびっくりするだろうなと思いました。笑。

 品質の良し悪しをわかってもらうためというよりも、マニラのコーヒー屋さんは、コーヒー抽出専門の「バリスタ」というものを雇うのか、とか、マニラのコーヒーショップでは、こういったコーヒーを販売しているのかといった、経験をしてもらいたかったのです。経験は何よりも強く印象を与えます。

 

 

 今回の質問タイムでは、特に病虫害対策の質問が多く出ました。特に皆の興味を引いたのは「ソーティーモールド」という病気、日本語ではなんというんでしょうか。これは、アリとカイガラムシと菌類の共同作業で、コーヒーの木を真っ黒にします。まず、アリがカイガラムシを木の若い枝の部分に移動させます。カイガラムシがその若く柔らかい木の皮からくちばしのような突起物を指して、樹液を吸います。その樹液から養分を吸収し、余った養分は排泄されます。この排泄された養分がとっても甘く、アリは大好物です。そのため、ほとんど動かないカイガラムシを移動させて、その甘い物質が生産されるのを待っているのです。アリって賢いですね。しかし、アリも全てを消費することはできず、その残りは、菌が食べてしまいます。そして、繁殖します。繁殖すると、コーヒーに木は真っ黒に変色したようになります。実際は、葉や枝の表面にこびりついているだけなんですけどね。指でこするとすぐ落ちますが、この黒い部分が光合成を邪魔したり、他の病気を誘発されたり、収穫時にアリの攻撃を受けたりするので、結構面倒な病気なのです。そのため、実際の仕組みを農家さんたちに説明すると「はー」「ほー」と感嘆してました。アリをコントロールすること方法をお伝えして、今回のワークショップ終了。帰りは、ジプニーの上に乗りながら、日が暮れて、シルエットになった山間を縫うように走り、帰宅。

 

 

 今回のブログ最後は、ワークショップ。はい。またです。今度は、先ほど紹介した、トゥブライの町長さんからの依頼です。CGNの協力を得ながら、結局6時間しゃべりっぱなしのワークショップでした。映像あり、抽出トレーニングあり、実践の精選方法のトレーニング等々参加型のワークショップとなりました。座学ばかりじゃおもしろくありませんからね。どんどんワークショップが上手くなってきています。参加人数も今回は150人ぐらいが来ていました。増えてる。笑