山本博文の北ルソン・コーヒー探訪記⑱

コーヒーの宿敵とアブラ訪問

 

 コーヒー・ベリー・ボーラーという虫をご存知でしょうか。とっても小さい虫で、とっても厄介な虫です。コーヒーの豆を食べちゃいます。メスの成虫が、コーヒーの実に穴を開け、そして、実の中で卵を産みます。その幼虫がコーヒーの豆、つまり種を食べるわけです。その結果、収穫量が減ります。フィリピンにおいても、この虫のせいで農園に被害が出ています。そこで、この虫を捕まえて、被害を抑えるためのトラップを作りました。

 

 

 このトラップは、メスを引き寄せるためのフェロモンをペットボトルにぶら下げて、そのメスをおびき寄せて捕まえるというものです。材料がワイヤー(針金)とペットボトルというすぐに手に入るものなので、農家さんにも作れます。フェロモンとなる混合物も、大学で頼めば安く手に入ります。他の生産国では、コーヒー研究所や大手輸出会社が無料で配布していますが、フィリピンでは、まだそれをやっている機関がありません。残念。

 こうやって作るんだよ、と農家さんにお伝えしてすこしずつ広げていっているところです。

 

 

 そういえば、「The Coffee Handbook – Postharvest Processing of Cordilleran Quality Coffee」というハンドブックができました。CGNの反町さん一緒に、そして、CGNを通してサポートして下さっている横浜のWE21さんのおかげで作ることができました。内容は、精選方法の各段階を詳しく写真と絵で説明しています。ワークショップ毎に、このハンドブックを農家さんの皆さんに配っていくことにします。今も苗場と剪定に関するハンドブックを作成中です。結構楽しいですよ。本作りって。

 

 

  先日開催したワークショップの場所で、ハニー・メソッドを紹介したら、それを実践してくれた農家さんがその豆を持ってきてくれました。ハニー・メソッド。通常の、水洗式の加工と違い、果肉除去を行ったあとすぐに、天日乾燥をおこないます。するとできあがったパーチメントが斑点がついたような色になります。水洗式のパーチメントは綺麗な肌色のような色になります。

 ワークショップでやったことを実際に行ってくれたことが嬉しいですね。やった甲斐があるというものです。

 

 

 2014年最後の産地訪問、今回は10時間以上の移動です。アブラという州で、その中の「バッキャロー」という場所に行きました。しかし、ばっきゃろー、って。。。第二次大戦中に日本人がきて、「ばっきゃろー」と叫んだことが由来だそうです。なんとも複雑な気分です。

 基本的にこの地域は、標高が低くロブスタ種と呼ばれるコーヒーが生産されています。今回は、新しい場所を見に行きたくて、そして、アラビカ種があるらしいという情報をもとに伺いました。初めての場所です。

 

 

 残念ながら、アラビカ種は数える程度で、ほとんどがロブスタ種でした。うーん残念。しかし、ここの農家さんたちはとても丁寧にコーヒーを育てており、生産面積も広かったです。嬉しいことに、標高が通常のロブスタ種に適する高さよりも少し高く、アラビカ種も育つ環境にあったのです。そのため、農家さんたちとお話しして、少しずつアラビカ種に移行していったらいいと思いますよとお伝えしました。

 数年後、アラビカ種が産出されることを願いながら、2014年のコーヒー産地訪問これにて終了。