ベンゲット州カパンガン町サグボ村

 イオン環境財団の助成によるベンゲット州カパンガン町サグボ村での水源保全と再生事業は2012年に開始され、2014年3月末に終了しました。サグボ村のパートナー団体は「Dayukong Association(DAI)」。

 1年目の2012年度にDAIメンバーの28名(家族)によって、28,000本が植えられ、2013年度にはベンゲット松5,200本、アルノス12,480本、カリエンドラ6,290本、竹500本、アラビカ・コーヒー18,970本の計43,440本を追加しました。たいへんな数ですが、サグボ村の住民はカンカナイ族という北ルソンの先住民のひとつで、伝統の互助システム「アルヨン」の習慣を今も実践していて、手の足りない植樹地は協力し合って植樹作業を終えました。

 サグボ村がバギオから2時間強と比較的近いこともあって、バギオの英語学校で学ぶ日本人生徒さんたち、フィリピン大学バギオ校のエコクラブの生徒さん、また、日本からのスタディツアーのみなさんなど、外部の多くのボランティアの方たちが植樹に参加しました。

 サグボ村は北ルソンの主要河川のひとつ・アンブラヤン川の水源でつい最近まで深い原生林に覆われていたのですが、市場経済が急激に入り込み、人々は現金収入を求めて森を切り開き、焼き払い、サヨテ(はやとうり)の棚にかえてきました。

 サヨテは地元の人には「グリーン・ゴールド」と呼ばれる人気の換金作物です。どんな急峻な斜面でも針金と竹で簡易な棚の骨組みを作れば栽培でき、あまり手をかけなくてもどんどん成長します。年間を通して収穫でき、農家の人にとっては年間を通して収入を得られるというメリットがあります。一方で、1キロあたりの価格は他の野菜に比べると安く、急な斜面を運ぶ作業はたいへんな重労働になります。棚を必要とするサヨテ栽培は、森をきれいに焼き払ったあとにしか作れません。しかし、「背に腹は変えられない」と、山岳地方では、貴重な森が住民たちの手ですごい勢いでサヨテ畑に代わりつつあるのです。

 住民たちの生計向上にも配慮しながら、貴重な森林破壊を食い止め、サヨテに代わる現金収入源を紹介して、水源を守ろうというのがこの事業の目的でした。サヨテの棚の下に、土を肥やすカリエンドラというマメ科の木、成長の早いアルヌスというハンノキ科の樹木とともに、アラビカ・コーヒーの苗木を植え、サヨテで収入を得ながらコーヒーを育て、将来、コーヒーから十分な収入が得られるようになったら、サヨテ畑をコーヒーのアグロフォレストリー農場に全面的に転換しようという事業です。

植樹事業から5年たったあたりから収穫量が少しずつ上がってきました。大量の苗木を配布しましたが、メインの作物であるサヨテ栽培で忙しく、コーヒー栽培にあまり熱心でなかった農家もいたようです。

2018年10月に季節外れの台風がサグボ村を襲い、サヨテは根こそぎの大きな被害を受けました。単一作物栽培による農業が脆弱なものであることを農家は実感し始めました。きちんと栽培した農家のコーヒーの収穫量も上がりはじめ、再びコーヒー栽培に注目が集まりました。

CGNでは、収穫や集荷のための手が足りない農家をコミュニティの中で支え合えるようにと、組織強化のプロジェクトを2017年度に行いました。最終目標をフェアトレード認証の取得に定め、京都のNPO法人「フェアアプラス」とフェアトレードショップ「シサム工房」が主体となり、地球環境基金の助成を受けて行った事業です。

2019年度には世界の人々のJICA基金の助成を受け、「マナラボー環境と平和の学びデザイン」とともに、収穫後のコーヒー豆の精製に必要な機材の支給と品質向上のための講習会を開催しました。