山本博文の北ルソン・コーヒー探訪記⑥

精選実験!その結果は?

 年の瀬です。日本の食べ物が食べたくて仕方ありません。吉野家の牛丼、サバの塩焼き、納豆、卵かけ御飯、唐揚げ、お寿司、すき焼き、天津飯、王将の餃子、足立区のつけ麺、横浜ラーメン、もっこすラーメン・・・嗚呼、遠い。日本は遠いです。実際に帰ろうと思うと16時間ぐらい掛かります。16時間となると、相当の決意が必要です。重い腰をあげるための決意。うん。今年はあきらめようと思います。何食べましょうかね。年越しそばぐらいは食べたいんですよねぇ。この際生麺とかこだわってられません。近くの輸入食材屋さんで、日本の2倍の値段がするどん兵衛(300円ぐらいします)でもしばきましょうかね。ふふ。 

閑話休題

 

 さてさて、コーヒー豆は収穫してから結構な精選行程があります。順を追っていきますと、完熟の実を収穫し、不純物を取り除き、中身を取り出すために「パルピング」と呼ばれる行程に移ります。取り出された中身の事を「パーチメント」と呼びます。そのパーチメントには粘着質の「ミューシレージ」という物質が付いているため、主にイースト菌の力を借りて発酵分解をします。そして発酵段階がおわったパーチメントをしっかりと洗い、乾燥をおこないます。乾燥が終わるとパーチメントを取り除き「コーヒー生豆」の状態にして、「キュアリング」とよばれる「ねかし」の段階を経て、ようやく市場に出回ります。少なくとも収穫から1ヶ月以上掛かるのが通常です。長いでしょ?

 しかし、これは通常のお話。ここフィリピンでは、この精選行程において様々な問題があります。未成熟の実を収穫しちゃうこと、発酵時間がそれぞれの農家で違うこと、また発酵のさせ方が違うこと、そして、乾燥時間がまちまちなこと等々。そこで、この国の精選行程の問題、発酵時間のベターな方法を探すべく、最近ある実験をし、終了しました。その結果を簡単に書こうと思います。

 

 ずは、この国のアラビカコーヒーの特徴として、ボクのカッピングによる香味評価では、「ナッツのような香り、食パンのような香り(あの白い部分ですね)、軽い酸味と口当たり、ほのかな甘みが心地よく後に残ります」といった感じです。可もなく不可もなく、飲みやすいコーヒーといった感じです。他の国の豆でいうと、ブラジルとかコスタリカ、ホンジュラスのコーヒーに近いです。もちろんスペシャルティコーヒーではなく。また、この香りはここフィリピンだけでなく、東南アジアのマイナーなコーヒー生産国は一応にしてこういった香味傾向になってしまいます。中国しかり、ベトナムしかり、ラオスしかり・・・。これはきっと精選過程がうまくいってないのでは?と予測して。ここは一つ自分でやってみよう、という事になりまして、以前掲載したCGNと素晴らしい信頼関係を結んでいるトゥブライはコロスにいらっしゃる「フィリーさん」の農園へいって収穫しました。

 収穫した豆を早速「パルピング」して発酵段階へ移しました。発酵時間は12時間、16時間、20時間、24時間、28時間、そして36時間です。4時間区切りでやってみました。なんで最後だけ8時間もあいているかというと、寝過ごしたんですね。朝4時起きとかだったんで、すっかり夢の中でした。乾燥日数は2週間程度。午前中晴れて、午後は雨といった天候でした。大学の授業を受けながらなので、結構バタバタしてましたね。授業に行く前に、突然の雨を防ぐためにカバーをかけて、帰ってきてカバーとって、朝早くからパーチメントを外に広げて・・・。いやー大変でした。生産国に人はこういったことを当たり前のようにやっている事に、改めて感服した次第です。

 

 結果としては12時間、16時間、20時間が良かったです。「フルーティな香りとナッツの香り、厚みのある甘みとボディ感を一緒に楽しめます。酸味と甘みのバランスが整っていて味に立体感があります」といった感想です。24時間も良かったのですが、少しキャラクターに欠ける印象でした。28時間と36時間は、ナッツの香りがしっかりとあって良かったのですが、強さにかけるのと、発酵した香りが強く感じました。総合していえる事は、発酵時間が長くなるにつれて、香りが弱くなって、欠点の香りを感じる傾向にあるようです。また、ここの国では、発酵段階で結構な量の水の中にミューシレージがついたパーチメントをいれて発酵させているので、発酵が早く進み、欠点の香りも出やすく、またその使用されている水も「きれい」とはいいがたいものです。こういったことも、最終的な品質に影響を与えてしまいます。ちなみに今回は、水をほぼ使わずに行って見ました。

 なかなか面白かったですね。自分でやってみて初めて分かることも沢山ありましたし、香りに特徴が出たことでなんだか安心しました。この国のコーヒーに将来性を感じさせてくれる結果となったのが何よりも嬉しかったです。この結果と、ボクのおこなった方法がすべて正しいという訳ではありませんが、CGNの協力も得ながら少しずつ少しずつ農家の皆さんへお伝えしていって、この国のコーヒーを向上させていければなぁと考えている今日この頃の年の瀬です。

 

やっぱり数の子とか食べたいんですよねぇ〜だれか作ってくれへんかな・・・

 

良いお年を!